良好なコミュニケーションのための職場におけるメールの使い方
昨今、ビジネスにおいてメールを使ったコミュニケーションはなくてはならないものとなっています。
しかし、以前のコラム「職場環境を快適にするコミュニケーションの基本とは」でも書かせて頂いた事例のように、そのメールでのやりとりが、職場の人間関係に影響を与えたり、仕事のトラブルの原因になっているケースも増えています。
そこで今回は、職場におけるメールの使い方について考えてみたいと思います。
休暇の連絡
休暇申請をする時、会社や上司にメールで連絡するケースが増えています。
今の時代、「そんなの普通じゃない。何が悪いの」という批判があると思いますが、あえて書かせて頂きたいと思います。
それは、望ましくない と・・・
確かに有給休暇を取得することは、権利であり、法律でも会社は原則拒むことはできないとなっています。だから、有給休暇を取得すること自体が望ましくないというわけではないのです。むしろ、もっと日本人は、計画的に有給休暇を取り、リフレッシュするということをするべきでしょう。
私がお話したいのは、メールで休暇の申請をするという、その伝え方が望ましくないということなのです。
有給休暇を取得することは、労働者の権利ですが、誰かがお休みするということは、仕事の配置や配分を考えたり、サポート体制を整えたりということが、少なからず生じるのです。つまり、お互いさまの気持ちを持ち、補い合い協力し合うことが、職場には必要となるのです。
メールは、便利で効率的なツールですが、相手の状況など関係なく、一方的に発信されるものです。
相手が開封し、返信をくれて、初めてコミュニケーションが成立するのです。
特に、朝、体調不良などで急にお休みを取りたいという時などは、上司がメールにいつ気づき開封するかわからないわけですから、いくら自分が朝早い時間にメールをしていたとしても、始業時間過ぎてから上司がメールを見れば、事前に伝えたことにならないのです。
だから、時代遅れかもしれませんが、朝、体調不良などで急にお休みしなければならない時は、電話で連絡するほうが望ましいといえます。
また、このように急にということでない場合だとしても、やはり直接お休みを頂きたいと伝えるのと、単にメールだけで申請されるのとでは、どちらに気持ちがこもっているかという違いがあるでしょう。メールの場合は、どうしても字面だけになるので、無機質になりがちです。
上述したように、有給休暇の取得は、権利ですけれど、職場においてはお互いさまと皆が協力し合う必要があります。
だからこそ、上司をはじめ同僚が、「お、休暇か。仕事のこと心配しないで、ゆっくり休んでね」とか「休暇、楽しんできてね」という気持ちの良い関係になるためにも、直接口頭で(急な場合は電話で)、上司に休暇の申請を事前にするほうが良いのです。
メールで指示?
仕事を指示したり、依頼したりする時に、それをメールで済まそうとする管理職が増えているように思います。
もちろん、出張先や外出先などから指示をする場合、部下全員に連絡事項を伝える場合・・・など状況によってはメールで行ったほうが良いことも多々あると思います。なので、全てを否定しているわけではないのです。
最初の依頼・指示は直接話しましょう
しかし、初めて仕事の指示や依頼をする時は、メールではなく直接口頭で行うほうが良いと言えるでしょう。
上司が仕事を依頼し、部下がその仕事を受ける場合、「何に使う」「誰に対して」「いつまでに」・・・など、その目的や期限、そして依頼している上司の想いや思惑など、共有すべき事柄は、いろいろとあります。
もちろん、仕事を受ける部下は、上司が望んでいることを確認、あるいは想像して正しく汲み取る「部下力」とでもいえるであろう能力を発揮する必要があります。
しかし、メールで仕事の指示や依頼をする管理職の多くは、短い文章で端的に書いてくることが多いため、その「部下力」を発揮するのが難しくなっているという事態も起きていたりするのです。
その結果、確認のためのメールのやり取りが行ったり来たりして結局時間がかかってしまう。最悪のケースでは、そうして部下なりに頑張ってやってみたが上司の意図していたものとは違いやり直しが発生する。
こうしたことが起きた結果、やり直しだけで済めば良いですが、器の小さい上司だと、それだけで、「理解力が足りない」とか「使えないヤツ」などというネガティブな評価をしてしまうケースも意外と多いのです。自分の指示の出し方を棚に上げて・・・
そして、上司と部下の間には、溝が生まれいく・・・
だから、仕事の依頼や指示は、直接口頭で行うほうが望ましいと言えるのです。
上述したように出張などで、ロケーション的に離れている場合ならともかく、たいていの場合は、上司も部下も同じフロアで仕事をしており、メールしなくも直接話せる環境なはずなのですから・・・
また、ロケーション的に離れている場合でも、電話という手段だって無くはないですよね。
長文メール
相手の時間を大切にする
メールは1つのコミュニケーションツールですが、ビジネスにおいては、直に面と向かってのやりとりではないだけに、コミュニケーションの基本をこれまで以上に意識する必要があります。
例えば、ビジネスにおいては常に相手の貴重な時間を頂いているということを忘れないということなど・・・です。
「この意識を持っているのか?」と、いつも疑問に感じるメールがあります。それは、長文メールです。
ビジネスにおいて、多い人は、1日何100通というメールを受け取るといわれます。
それを処理するだけでも大変だと思いますが、それに要する時間もすごいものではないでしょうか。
そのような中、長文メールが送られてきたらどうでしょう。
時間や気持ちに余裕がある場合は良いかもしれませんが、たいていの場合、「後で見よう」とか、流し読みされたりしているのではないでしょうか。
昔、メールがまだない頃、ビジネスのコミュニケーションツールの主流は電話でした。
電話に関するマナーとして次のようなものがあります。
電話は3コール以内に取る
電話を取り次ぐ際、時間がかかりそうな時は、折り返しにする
用件は手短(目安3分以内)に済ます
これらのマナーは、ビジネスにおいては「相手の貴重な時間を大切にする」ということがベースになっています。
メールは簡潔に
メールにおいてもこの「相手の貴重な時間を大切にする」ということは変わらないのです。
そう考えると、長文メールは相手の貴重な時間を大切にしているとはいえないのではないでしょうか?
送られてきた以上、メールを読むということは受信した者の義務だと思いますが
長文で何を言いたいのか要点がわかりずらいメール
忙しく余裕がない時に送られてきた長文メール
こうしたものは、単純に受信した者が読まないのが悪いとは言い切れないのではないでしょうか?
また、それだけの長文を書くのに自分自身どれくらいの時間と労力をかけたのでしょうか…
こう考えていくとメールは、用件の要点を伝える、連絡事項を伝えるものとして利用し、できるだけ簡潔に10~15行以内に収める。
そして、重要なことは別資料として添付する、といったことを心掛けていくことも意味があると思うのですが、いかがでしょうか?
CCメール
皆さんも、仕事で毎日たくさんのメールを受け取っていらっしゃるのではないかと思います。
さて、それらのメールをちょっと思い返してみて頂きたいのですが、それらのメールであなた宛に送られて来ているメールの割合はどれくらいでしょうか?
意外と少なかったりしないでしょうか・・・
最近多くなったのが、CCやBCCで送られてくるメール です。
確かに情報共有という観点で考えると、とても便利な機能だと思います。
しかし、何でもかんでも「念のため」ということで、CCにいろいろな人を入れてメールを送るということが増えていないでしょうか?
CCメールが増えると・・・
CCで送られてきたメールについては、返信する必要はないけれど、確認する義務があるというのがルールといえるでしょう。
ですが、あまりにその数が多くなってくると、「後で見よう」とか「まあー、自分には関係ないだろう」・・・など流して読んでしまうようになります。
さらには、返信のやり取りも全員に返信で行われ、「了解しました」などのやり取りも送られてくる。
その結果、さらにCCメールを流して読むようになる。
こんなことが起きていないでしょうか?
メールを送るほうも、「念のため」と考え、何でもかんでもCCにいろんな人を入れる。
その「念のため」が、ほんとうに必要な「念のため」なら良いのですが、そのメールを送る人にとっての「念のため」で、メールを受け取る人にとっての「念のため」でないケース・・・こうなってくると、知らず知らずのうちに「皆に伝えてあるし・・・」とか、「誰かが気づいてくれるだろう」などという無責任感覚が芽生えてしまう危険性があるのではないかと思います。
CCのはずなのに・・・
また、「念のため」「情報共有のため」にCCを入れるというのがルールであるはずなのに、CCで送られている人に対して、「○○さん・・・・してください」などのように、突然宛先(To)としてのコメントが書かれる。
最悪の場合は、長文の最後にこうしたコメントが書かれている。
そして、気づいていないと「メール送ったでしょ」と責める、責められる。
結果、職場のコミュニケーションがぎくしゃくしてしまう・・・ということは、いたるところで起きていたりするのではないでしょうか。
こうした事態を起こさないために、CCメールに関するルールについて整理するとともに、何でもかんでもCCに入れて送るのではなく、ほんとうに必要かどうかを考えて送る、ということを考えたほうが良いと言えるでしょう。
返信をきちんとする
信頼されない人に多いのが・・・
労務問題の対応をしている中で感じることの1つとして、職場において信頼されない、嫌われている人の特徴として多いことの1つに「メールの返信がない」というものがあります。
なかでも、自分からメールをしてきておいて、こちらが返信しても返信がないというパターンが、一番嫌われるようです。
特に頼み事をしてきたりして、その期待に応えられない返事をしたら全く返事がないというケースが多いです。
今や私たちの生活においてメールは欠かせないものになっています。
メールは、自分のタイミングで瞬時に送れるのでたいへん便利です。しかし、以前のコラム「職場活性化のヒント・・・機心とは」でも触れましたが、そのことで、逆に待つということがなかなかできない、返事が来ないと不安になってしまうという人が増えています。
だから、返信がないということに不安と不満を抱きやすいのです。さらに、自分の都合でメールしてきておいて返信がない、特に期待に添えない場合…となるととなおさらでしょう。
こうして書いていると「そんなこと、メール返信するの当たり前じゃん」と思うと思いますが、意外とできていない人って多いのです。
これは仕事だけに限らず、プライベートでも遭遇することではないでしょうか?
だから、メールの返信はきちんとする。このことは、円滑に仕事を進めていくうえではもちろん、プライベートでも大事なことと言えるでしょう。
特に自分から発信したメールの時は、相手に返信してもらったことに感謝し必ず返信する。
そして、できるだけ自分の返信でメールのやり取りが完了するようにする。
このことを意識しておくと良いでしょう。それだけで、相手があなたからのメールが届いた時に、「また、あいつからかよ…」という反応にならないで、ポジティブな気持ちで見てくれるという違いが出てくると言えるでしょう。
そして、そんなところから仕事がうまくいく、いかないの差が、意外と出てくるのだと思いますが、いかがでしょうか?
決めつけメール
たまに次のようなメールを受け取ることがあります。
それは、決めつけメール・・・いや正確にいうと、確認といいながら「決めつけられてる?」と感じてしまうメールです。
具体的にいうとこんな感じです…
※担当者違いでしたら、お手数ですが適切な方へ回して頂ければ幸いです。
〇〇の際、△△する必要がありますが、きちんと対応して頂いていますでしょうか?
対応できてないと、×××という問題が発生します。
ご確認のうえ、ご返信頂きますようよろしくお願いします。
というようなものです。
いかがでしょうか?
一見何の問題もないメールのように思えますが、受け取り手が担当者でなかった場合、受け取り手によっては、次のように感じるのではないでしょうか?
「えっ、私?私に何してくれっていうの??」
このメールの発信者は、確かに問題に気づいて「何とかしないと」という前向きな意図でメールを送っているのだと思いますが、担当者でなかった場合、受け取ったほうは、何だか決めつけられて責められているように感じるということがあるのではないでしょうか。
内容的には、日常の業務の中でよくあることですし、上述したようにポジティブな行動だと思うのですが、メールでやり取りすることで起きているネガティブな事象だと思います。
相手の時間を尊重し文面に気をつける
これまでも書かせて頂いていますが、メールは基本的に文字だけのやり取りです。
そこには、表情や感情といったものがない無機質なやり取りです。
だから、相手が「自分じゃないのに、こっちのせいと思われてる?」というように感じないよう文面には注意を払う必要があるのではないかと思うのです。
上述した事例の場合、担当者がわからないので連絡させてもらったということを書いているのは良いのですが、内容を見ると「回してくれ」とか「確認のうえ」とか・・・もしかしたら担当者ではないかもしれない相手に対し、あたかも担当者であるという前提に立って文章を書いているのが問題と言えます。
また、相手が担当者でなかったとしても、相手に自分の都合で動いてもらおうとしていたりします。
そこには、相手の都合や時間に対する尊重がないのです。
当然、職場において協力し合うことは大切です。
しかし、こちらの都合で一方的に相手が動かざるを得ない状況にするのは望ましくないといえます。
そして、メールではそうしたことが起きやすいのです。
なぜなら、メールを受け取った相手は、必ず返信しなければならないのですから…
ましてや上記のようなメールだった場合、「私の担当じゃないですよ」と単純に返信したとしたら、かなりの確率で「非協力的」だとか言われるということが起きると想像できます。
こう考えると、不確実なことを確認や問い合わせする場合、メールを使うのであれば、文面に十分な配慮する必要があるでしょう。
もし文章に自信が持てない場合は、いや直接話ができるのであれば、直接尋ねるほうが良いでしょう。
組織として、必要、かつ望ましい行為であるのに、メール一つでお互いが嫌な思いをしたり、気持ちのすれ違いが生じたりしないためにも、互いにこうしたことにも配慮できる職場になれば良いなと思います。
用件は絞って送る
仕事に関するメールを送る際、いくつもの用件を盛りだくさんに書いて送っていないでしょうか。
そうしたことは、仕事の流れからしてやむを得ないことなのかもしれないですが、できるだけメールで何かをお願いしたり、確認をする時は、用件あるいは要点は、1つのことに絞って送るのが望ましいと言えるでしょう。
その結果、メールが2本送られることになっても、用件あるいは要点がきちんと伝わるのであれば、そのほうが良いと言えるからです。
コミュニケーションの基本を守り見落としや気づかないリスクを減らす
内容が盛りだくさんのメールのやり取りが発生している場合、よくあるのが、1つの依頼や確認事項に対してレスポンスをして、それ以外の依頼や確認事項を見落としてしまうということです。
こうしたことが起きた場合、多分に受取り手がきちんと読まない、理解しないのが悪いのですが、一概にそれで切り捨てることはできないと感じます。
なぜなら、人間の心理として、あることに(この場合は最初に書かれていること)意識を取られると、他のことには目がいかない、気づかないということが起きやすいと考えられるからです。
以前も書かせて頂きましたが、コミュニケーションで「言った」「言わない」という問題が起きた場合、その責任は発信者にあるのです。
しかし、ここで考えている盛りだくさんのメールのやり取りで受取手が気づかずにいた場合、たいてい受取手が悪者になるのです。
これは、あまり望ましいことではないといえるでしょう。
だから、メールで仕事の依頼や確認をするのであれば、用件あるいは要点を絞って送ったほうが、お互いにネガティブにならずにすむと考えられるわけです。
とはいえ、仕事の流れ的にまとめて依頼や確認をする必要がある時もあると思います。
そのような時は、それなりにボリュームがあることが多いと思いますので、できればミーティングを開いたり、電話で話すなど直接的なコミュニケーションを図ったほうが良いといえます。
もし、そうしたことが難しくメールでやり取りしなければならない場合は、メールのはじめに「用件は3件あります」などと記載するといった配慮が必要でしょう。
さて、いかがだったでしょうか?
今回は、職場におけるメールの使い方について、気をつけるべきことを、ありがちなケースから考察してみました。
メールがない生活やビジネスシーンというものは、今や考えられない時代となっています。
そのため、気をつけていないとプライベートでのメールの使い方と仕事でのメールの使い方の境目がわからなくなってしまいがちです。そこから「失礼なやつだ」とか「融通が利かない」などといった印象や誤解が生じ、職場の人間関係にヒビが入る危険性があるのです。
また、メールはあくまでもツールであり、連絡や情報共有をすることはできるけれど、直接コミュニケーションを取るのと違い、感情や意図など人間同士のコミュニケーションにおける機微まで伝わるものではない、ということを一人一人が認識する必要があると言えるでしょう。
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