新人を一人前にするために大切なこととは

新人が一人前になるために必要な2つのこと

新人が仕事を覚え、社会人として一人前になっていく段階において何が必要なのだろうか?

「最初から仕事のできる人」「一人前の人」などはいません。
誰もが最初は未経験で右も左もわからないのです。
特に学生から社会人になった時は、社会人という観点でみれば誰しもが同じ状態でしょう。

そこから皆、仕事を覚え社会人として身につけなければならないマナーやルールを覚えていくのです。
しかし、最近は昔に比べて、それなりの年齢になっても、こうしたマナーやルール仕事のやり方を身につけていない人が増えてきているように感じます。

その一因として考えられるのは、社会に出てすぐにきちんとした教育を受けていない人が増えているからではないでしょうか。
また、上司や先輩社員が、新人を教育しない・・・いや、できないということも増えているように思います。

仕事を単なる作業と考えるのであれば、マニュアルや手順書を与え、やり方を少し教えればいいのでしょう。
しかし、一人前になるには、それだけでは十分ではありません。マニュアルや手順書には書かれていない「視点の持ち方」「目的意識」「想像力を持って行う準備の仕方」・・・など、このようなことを身につけていく必要があります。

そのためには

仕事を通じていろいろと経験すること

マニュアルや手順書には書かれていないことを上司や先輩社員から、叱られたり、助けられたりして、教えてもらうこと ※私はこのことを「育ち方」と呼んでいます。

この2つが重要なのだといえます。

どう教えればよいかわからない

バブル崩壊後、日本企業の多くは、新卒も含め採用活動を控えました。
その結果、新卒が入って来なくなった会社では、新人教育をすることがなくなり、そのノウハウが社内から消えてしまったり、上司や先輩社員も新人を教えるという経験をしてこなかったため、いざ新卒採用が再開され新人を教えなければならないとなった時にどうしたら良いのかわからない、ということも増えているのではないでしょうか。

また、就職氷河期といわれた時代に社会に出た人たちにとっては、社会に出た時、派遣やアルバイトで働くことを余儀なくされた方も多く、上述した経験や育ち方をしたくてもできなかった、ということもあります。
そうした方たちにとっては、いざ新人を教えろと言われてもどうしたら良いのかわからないとなることは、致し方ないことだともいえるかもしれません。

では、いい経験や育ち方をするには、あるいはさせるには、どのようなことが必要なのか・・・そのことについて考えていきたいと思います。

いい経験

いい経験とは…

いい経験とは、どういうことをいうのでしょうか。

仕事をすれば、必ずその仕事を経験したことになります。

しかし、同じ仕事を経験していても、人によってノウハウやスキルに差が出ます。これは、どうしてなのでしょう・・・単純にその人の能力の問題なのでしょうか?

また、仕事ですから、自分でやりたい経験だけを選べるというわけにもいかないでしょう・・・

このようなことをふまえて考えると、能力ややりたい仕事=好きということが、いい経験になるとはいえないでしょう。

それでは、いい経験とはどういうことをいうのでしょうか。
それは、次のようなことをいうのではないでしょうか。

どのような仕事でもその仕事の意味を考えて取り組む ということです。

具体的にお話していきましょう。

たいていの場合、社会に出て最初に与えられる仕事は、コピーやファイリング、お茶だし、掃除などといったいわゆる雑務といわれる仕事であることも多いでしょう。

いい経験をするとは、そうした仕事に対してどのようなスタンスで臨むか、ということで変わってくるといえます。

どう考えて取り組むか…

どのような仕事、例えば雑用のように思えるような仕事でも、どうでもいい仕事というものは存在しません。職場において必要だから、その仕事があるのです。だから、そういう仕事を与えられた時、その仕事を雑用と考え取り組むのか、そうでなく意味のある仕事と考えて取り組むのか、ということです。

仕事をいい経験とする人は、そうした仕事を与えられた時でも、その仕事の意味を考え仕事に創意工夫をします。

例えば

会議資料のコピーを頼まれた時、「縦、横」「A4、A3」…いろいろな向きや大きさの資料が交じっていた場合、会議の出席者が資料をくるくる回して見ないですむように、必要な資料がすぐに見つけられるように綴じ方を工夫します。

お茶だしをする時、お客様をいかにお待たせしないでおいしくお茶を飲んで頂けるかを考えてお茶を煎れます。

いかがでしょう?
意外とできている人は、少ないのではないでしょうか。

こうしたことは、その場ではたいした意味もないように思えますが、こうしたことを何年間か続けていけば、その仕事を雑用としか考えないで取り組んでいた人と比べノウハウやスキルの差となってくる、そして、重要な仕事を任されるようになった時にそれが大きな差となってくるのではないでしょうか。

こうしたことを、私は「いい経験」というのだと思います。

そして、このことは、上司や先輩に教えてもらえればありがたいですが、そうでなくても、自分で気づいて意識すればできることでもあります。
ですので、ぜひ、いい経験を積むということを意識し、どのような仕事でも仕事の意味を考え、あなたができる創意工夫をし続けて頂きたいと思います。
そうすれば、きっと将来いい形で一人前になっていることと思います。

また、会社や組織においては、新人が「いい経験」を積めるよう、単に仕事のやり方を教えるのではなく、考え方や姿勢を指導していくという仕組みを作り、上司や先輩社員に周知徹底して頂くのが良いと思います。

では、次に「育ち方」ということについて考えていきたいと思います。

いい育ち方

仕事というものは…

仕事というものは、それを処理する、言いかえると作業と考えて行うということも可能です。
仕事を処理するという観点で考えれば、マニュアルやハウツー本を見る、最近ではインターネットで検索することで、ほとんどの人がとりあえず仕事をすることができます。
しかし、それでは何だか味気無いですし、やり甲斐を感じたり、何か新しいものを生み出したり、人に感動を与えるといったものにはなかなか繋がらないでしょう。

ここでちょっと話は飛びますが、私の若い頃の体験をお話したいと思います。

間違っていないのに…

25年前、当時勤めていた会社で、私は営業から人事に異動になりました。
異動して最初に担当した業務は、給与・労働保険でした。
労働保険の業務の中には、労災に関わる業務も含まれていました。

異動して1ヶ月くらい経った頃だったと思います。
ある営業所で労災が発生しました。
私は、営業所長などに状況を確認しながら処理を進めていきました。
労災の内容もそんなに重大なものでもなかったので、少しホッとしながら、社内の書類と労働基準監督署に提出する書類を作成し、部長のところにハンコをもらい行きました。
その時、私は、部長から叱られたのです。書類に不備なところがないのに・・・です。

なぜだと思います?

それは、こういうことでした・・・

部長 「この労災が起きた原因は何だ?」

 「原因は、確認したところ、×××××××ということでした」

部長 「そうか… で、再発防止のためどういう対策をしたんだ?」

 「えっ ・・・・・・」

部長 「いいか、労災が起きてしまったことは、残念だが仕方ない。だが、次に我々人事がすべきことは、同じ原因で労災が起きて、また社員が不幸なめにあわないように、きちんと再発防止のための対応をすることだ。もう一度、所長と相談してこい!」

さて、いかがでしょう。

私は、今にして思えば、人事に異動してすぐにこういう体験ができてラッキーだったと感謝しています。
なぜなら、これこそがいい育ち方の一例だと考えているからです。

いい育ち方とは…

具体的にいうと、最初に私がした仕事は、初めてする仕事ですが、自分なりには先輩に聞いたり、人事のマニュアルを見たりしてきちんと処理(そう、まさに処理)したつもりでした。

しかし、部長から指摘されたことは、こうしたマニュアルには書かれていない「人事という仕事をするうえでの心構えや姿勢」といったものでした。
こうしたものは、マニュアルやハウツー本を見ても書かれていません。
上司や先輩から仕事の中で助言されたり、叱られたりしながら身につけていくものです。

だから、上司や先輩がきちんと部下や後輩を育てていく、という意識を持たなければならないのです。
そのためには、会社や組織として、社員(特に管理職や中堅社員)に対し、新人(若手)を育てるという意識付けとミッションを与える必要があるでしょう。
そして、そういう環境で育ってきた若手社員が管理職や中堅社員になったときには、自分が育てられた経験があるので、自然と育てようという意識と行動が期待できるのです。

考えてみると、元々日本企業は、こうした環境を社内で構築できていたはずです。
しかし、日本企業の多くは、上述したようにバブル崩壊後の長い不景気の中で採用を抑制し、社内で人材を育成するという環境が弱くなってきていると思います。今一度、人の育て方について考えてみることが必要なのではないかと思います。

特に新卒や第二新卒といった若手社員の採用を行っている会社は、こうしたことを真剣に考え、必要な体制作りや投資をしていくことが望ましいでしょう。

ヒューマシー人事労務研究所では、若手社員の育成についてのお手伝いもさせて頂きます。
ぜひお気軽にご相談ください。(ご相談はこちらから)