おしゃれと身だしなみの違いとは
3月に入り、まだまだ寒い日もありますが、少しずつ各地から春の便りが届き始めました。
春というと、人生の節目・・・入学や入社といった新たな門出の季節です。今年もあとひと月もすると、初々しい新入生や新入社員たちの姿を街で見かけることになるでしょう。
特に、新入社員となる皆さんは、これまで10数年間続いてきた学生という立場から、社会人という立場になり、社会における役割や責任といったものが大きく変化します。そうしたことによって戸惑うこともあるでしょう。
と、いうことで、今回は、そうした戸惑うことの一つ、社会人になった時に勘違いしやすくて第一印象に大きな影響を与えかねない「身だしなみ」というものにについてお話をしたいと思います。
「おしゃれ」と「身だしなみ」は違う
「おしゃれ」と「身だしなみ」
どちらも服装などファッションに関する言葉ですが、この2つには違いがあることを理解されてますでしょうか?
最近では、制服のない会社のほうが多くなっていますし、クールビスなどで男性もノーネクタイが珍しくなくなっています。クールビズも、省エネなどの理由から始まったばかりの頃に比べて、期間も長くなっていたりし、冬などでもスーツにノーネクタイの方を電車の中などで見かけることも珍しくなくなってきました。さらには、IT企業などTシャツ、ジーパンもOKという会社も出てきたりしていますので、その線引きは昔に比べてかなり曖昧になってきているように思います。
が、「おしゃれ」と「身だしなみ」には、明確な違いがあるのです。
相手がどう思うか
おしゃれとは、一言で言うと「その格好をしている本人が好きで気に入っていればOK」というものです。周りの人が、驚いたり、「何あれ…」と怪訝に感じても関係ありません。だから、奇抜な髪型やアクセサリー、破れたズボン・・・などでも許される(?)のです。
しかし、身だしなみとなると、そういうわけにはいきません。
奇抜な髪型やアクセサリー、破れたズボン・・・などは、「場をわきまえろ!」というような厳しい反応や、直接言われたりしなくても「この人は信用できない」といったネガティブなイメージを相手に与えることが多いでしょう。
では、「身だしなみ」ととはどういうものなのか・・・
身だしなみとは、「自分が気に入っていれば良いのではなく、相手に不快な思いをさせない服装や恰好であること」というものです。いわゆるTPOをわきまえたものである必要があるのです。
極端な例を言えば、芸能人やファッション界などで、奇抜な髪型やアクセサリー、破れたズボン・・・などという格好が許される職業もあります。が、そうした職業は、そのおしゃれ自体が仕事の一部であったりしますので、当然ですが、ここでいう「おしゃれ」と「身だしなみ」の違いとは一線を引いて考えて頂きたいと思います。
ただ、先述させて頂いたように、最近は、会社によっては、Tシャツ、ジーパンOKという会社もあります。 クールビズでは、官公庁でもアロハシャツOKというケースもあります。そういう意味では、ビジネスにおける服装などに関する基準も変化しているといえるでしょう。そう考えれば、仕事における身だしなみは、それぞれの職場において定めたものがあれば、その基準で考えればOKということになるのかもしれません。
しかし、平日の街中や電車などの中で見かけるビジネスマン、ビジネスウーマンの多くがTシャツやアロハシャツを着ているわけではありません。
ということは、変化しているようで、実は本質的には、身だしなみの基準は大きく変わっているわけではないということになるとも言えるのではないでしょうか。ですので、今回の「おしゃれ」と「身だしなみ」の違いに関しては、この一般的と言える観点に基づいてお話を進めていきたいと思います。
不快は信用を失う可能性がある
バレンタインやホワイトデー、古くは土用の丑の日に鰻を食べる・・・など、商売人の仕掛けで定着してきたもののように、ビジネスファッションという観点からの仕掛けによって、これまでとは違った服装が提案されています。
それはそれで今後定着していくものはあると思いますが、その過程においても「おしゃれ」と「身だしなみ」の区別は残ると考えられます。
なぜなら、ビジネスにおいては、相手に不快な思いをさせない・・・このことは絶対になくならないものだと考えられるからです。
繰り返しになりますが、私たちもビジネスファッションの変化によって、仕事で着る服の選択肢が増えてきていますが、そうした中にもおしゃれに走り過ぎないよう身だしなみということには気を配る必要があるでしょう。
貴方がその格好を気に入っていたとしても、ビジネスや職場で関わる人の考え方や価値観は一つではありませんので、中には不快に感じる人もいるかもしれません。そんなことから、仕事における信用をなくすのは馬鹿らしいと思いませんか・・・だから、身だしなみ・・・とても大切だと思うのです。
身だしなみを整えることは職場の活性化につながる
服装の乱れは心の乱れという言葉がありますが、服装はその人の心の状態を表すものです。そして、職場においても、その職場の心の状態=職場環境の状態を表すものと言えるでしょう。
例えば、銀行員がラフな服装だったとして、貴方は自分の大事なお金をその人に預けられるでしょうか。おそらく、多くの方が躊躇されるのではないかと思います。
また、夏場など薄着になる季節の服装も、職場やビジネスの場では、あまり肌の露出したものは望ましくないでしょう。だから・・・ということではないにせよ、セクハラの問題が起きるリスクが高まるなどといった職場の風紀が乱れてくる可能性が出てきます。逆に言えば、職場の皆が、きちんと身だしなみを理解し、仕事の場にふさわしい服装をしていれば、皆が気持ちよく仕事に集中できる職場環境が醸成できるとも言えるでしょう。
そして、ちょっと違う観点から考えると、職場の身だしなみがきちんとしている職場では、誰かの身だしなみの乱れから、その人のメンタルヘルス不調などのシグナルを発見しやすくなり、早期にケアすることができる可能性が高まります。その結果、社員も体調を崩して苦しむ確率が減りますし、会社も、社員が欠勤や休職することによる労働力や生産性の低下を防ぐことができるでしょう。
このように身だしなみを整えることは、職場の活性化にもつながるとも言えます。
ぜひ、職場の身だしなみ整えましょう。
そして、新入社員の皆さんも、最初は、いわゆるリクルートスーツで問題ないと思いますが、しばらくすると、それだけを着ているわけにもいかなくなり、それぞれが、自分で選んだ服を着はじめるでしょう。その時に、ぜひ、このおしゃれと身だしなみの違いを思い出して頂ければと思います。おしゃれに走りすぎないようにして、センスの良い服装を選んで頂ければと思います。
それから、新入社員を受け入れする職場の上司や先輩も、新入社員が仕事で着る服装を選ぶ時の基準は、職場の先輩たちがどういう服装をしているか・・・によって決まってくる、ということを認識し、お手本となる身だしなみを心がけて頂ければと思います。
職場でも、新入社員が入ってくる時期が、職場の風紀を再点検する良い機会と捉え、既存社員への服装等の再確認を促すといいでしょう。