OJT…新入社員を迎える時共育という考え方
今日から4月・・・新年度という会社も多いことでしょう。
そして、4月というと、多くの会社では新入社員が入社してくる時期でもあります。
人事や総務の方などは、入社式に新入社員研修と、慌ただしく多用な時間を過ごしていらっしゃることでしょう。
で、会社によっていろいろと違いがあるとは思いますが、そうした全社的なイベントが終わると、いよいよ新入社員たちが部門に配属されていきます。受入れ部門においても、「今年は、どんな新人が配属されてくるのだろう」と期待して待っていらっしゃることでしょう。しかし、その一方で、中には「新人が来るのはいいけれど、また教えなければいけないのは、忙しいのに勘弁してほしい」と内心思っている上司や先輩社員もいらっしゃるのではないでしょうか。
ということで、今回は新入社員を受け入れる職場における人材育成ということについて、上司や先輩社員が覚えておくと良い視点の持ち方についてお話してみたいと思います。
OJT・・・うまくいってます?
企業において、新しい人を採用した時をはじめ、違う部署から人が異動してきた時、新しい事業や業務を始める時・・・など、新しい人がその職場にやって来た時に、人に仕事を教える=教育ということが必要になります。
教育というと、研修やセミナーでするものと思いがちですが、実はそうしたものだけではなく、業務の中で業務を通じて教えていくというものもあります。
そして、こうした業務の中で業務を通じて・・・という教育のほうが、研修などで教えるよりも、現実には圧倒的に多いと言えるでしょう。
で、こうした業務の中で業務を通じて行う教育をOJT(On the Job Training)といいます。
ちなみに、研修やセミナーなど業務を離れて行う教育のことは、Off JTといいます。
さて、このOJTですが、当然必要なものであり、人を迎え入れたら、初めての業務をするときには、上司や先輩といったその業務を理解している人が行うということは、誰しもわかっていることだと思います。しかし、実際の現場においては、このOJT・・・意外とうまくいっていなかったりしないでしょうか・・・。
どうして、必要だと誰しもわかっているOJTがうまくいかないのか・・・その原因ですが、私は大きく分けると2つあると思っています。では、その原因について考えてみましょう。
任せっぱなし・・・
1つめは、「組織として、OJTの仕方を明確に示し、その重要性をきちんと伝えていない」というケースです。
組織として、「この人の面倒をみるように・・・」という指示はするのですが、どういうことを、いつまでに、どのようにして教えていくのかということは示さずに、指示した人に任せっきりにしていたりしないでしょうか。また、どうしてこの人を育てなければならないのか、この人を育てることでどういうことを実現していくのか・・・などという目的(=重要性)を明確に伝えていることは稀なのではないでしょうか。多分に、「当然、わかっているよな」という感覚で、上記のように指示だけして後は任せているというようなことがあるように思います。
このことが、組織として必要と考える新しい人材や業務を育てる形になっていない原因だったりするのではないかと思うわけです。
なので、新人、特に新卒で社会人経験のない新人を受け入れる場合は、事前に会社として、受入れ部門に・・・できればその新人の教育を担当する先輩社員本人に、きちんとその役割を与え、目的ややり方など必要なことを共有する。そして、その成果についてもきちんと評価してあげるといったことを整備するようにすると良いでしょう。
教える?
次にもう1つのOJTがうまくいかない原因です。
2つめの原因、それは、OJTを行う人の意識の問題です。こういうと、少し誤解が生じるかもしれないので、補足させて頂くと、「教えなきゃ」「育てなきゃ」という意識が強すぎる時、あるいはその逆で「忙しいのに教えるのか」などOJTが余計な仕事という気持ちを持っている時・・・というイメージです。
どういうことかというと、「教える」という思いが強すぎると、どうしても自分のやり方を押し付けたりしがちです。また、余計な仕事と考えている場合、通常業務を優先し、後回しになったり、おざなりになったりということになりがちです。こうなると、高圧的な指導になったり、放置状態になったりして、OJTがうまくいかなくなるケースが起きてしまうのです。こうしたことは、組織にとっても、教える者にとっても、教えられる側にとっても、不幸でしかありません。
では、どうすれば良いのか。
その方法の1つとして、次のような考え方をするということがあります。
それは、教育という言葉を「共育」という漢字に置き換えて考えるということです。
教育という意味は「人間を望ましい姿に変化させるために、身心両面にわたって、意図的、計画的に働きかけること」です。
つまり、人を変化させるために行う・・・のです。
さて、ここでちょっと視点を変えて考えてみてください。これまでのコラムでも何度か書かせて頂いてきましたが、人を変えるということは、とても難しいことです。いや、人を変えるなんてことは、基本的に無理なことなのです。「いや、アドバイスしたり、注意したら、ちゃんと変わった人がいたよ」という方もいらっしゃると思いますが、その場合でも、あなたがその相手を変えたのではないのです。その相手が、自分の意思で「この人の言うとおりだよな」とか「この人の言うことは聞いておこう」と思ったから変わったのです。つまり、人は自分の意思でしか変わることはないのです。
だとすれば・・・教える、ましてや教えてやるという視点では、なかなか伝わらないことも出てくると言えるでしょう。
一方、共育という言葉は、もちろん当て字ですが、このような意味を持つのではないかと考えています。
皆さんも経験があると思いますが、人に教えるという時、教えていくために、あるいは教えることによって、自分自身も忘れていたことや曖昧だったことを再確認できたり、相手からの質問や反応によって新たな発見があったりということがあります。つまり、人に教えるということは、相手が育つだけでなく、自分自身も学べる(=育つことができる)という側面があるといえるわけです。
そう・・・共に育つ のです。
こういう意味で、「共育」という言葉を使ったのです。
そして、共育と考えると、自分にとってもメリットがあると思うことができますので、必要以上に「教えなきゃ」と考えたり、余計な仕事を思ったりすることがなくなるのではないでしょうか。
ですので、OJTをするときは、この共育という言葉を思い出し、一緒に成長していけると良いと思います。
ぜひ「共育」・・・実践してみてください。そうすれば、様々な個性を持った新入社員に対し、画一的な教育ではなく、それぞれに合った共育ができ、受け入れる側も、新入社員も、成長していける、そうしたハッピーが生まれてくるのではないかと思いますが、いかがですか?