ホウレンソウとハインリッヒの法則を活用して組織強化をはかる方法

ハインリッヒの法則

「ハインリッヒの法則」をご存知でしょうか?

ハインリッヒの法則とは、アメリカの損害保険会社に勤めていたハインリッヒが見つけた法則で、1つの大きな事故が起きるまでにはヒヤリとする中規模の事故が29回起きていて、そうしたヒヤリとする事故が起きるまでにはハッとするようなちょっと危険な出来事が300回起きている・・・というものです。
別名「ヒヤリハットの法則」とも言われています。

この法則は、主に労働災害の防止において使われます。具体的にいうと、ハッとするような出来事の段階で予防策を講じていればヒヤリとする中規模の事故を防止できる。そして、ヒヤリとする中規模の事故が起きてしまったら、その対策をきちんと講じていれば重大な事故を防ぐことができる・・・という考え方です。
つまり、小さな問題やまずい出来事を放置せず、きちんと対処していくことが大切である、ということなのです。

ですので、労働災害を起こさない職場作りにおいては、小さなヒヤリやハッとしたことについてのホウレンソウがきちんとあがってくる仕組みを作り、そうした出来事についての対応とその情報共有を職場内できちんとしていくこと、このことが重要と言えるのです。

多くの業務に応用できる法則

さて、このようにハインリッヒの法則は、労働災害の防止において使われることが多い考え方ですが、それ以外にも仕事や組織運営における様々なケースに応用できる考え方でもあります。
例えば、「クレームの対応」「職場の人間関係」「ハラスメントの防止」・・・など、これらの場合でも大きな問題が起きる前に中くらいのトラブルがあり、その前に普段から誰かが嫌な思いをしたり、顧客からチクリと嫌みを言われたりというちょっとした問題が複数起きていたりするはずなのです。
特に「ちょっとした問題」は、日常的に起きる当たり前のことと見過ごしてしまいがちなので注意が必要で、その時に覚えておくと良いのが、このハインリッヒ(ヒヤリハット)の法則だといえます。

職場の活性化や良い組織風土作りという観点で考えると、「ルールを守らない」「協力しない」「モラルの低い言動」・・・など、普段のちょっとした望ましくないことを「ま、いいか」と放置せず、都度注意し指導していく、そして、再発防止の手を打つ、こうしたことを繰り返していく地道な対応が職場の活性化や良い組織風土作りにつながる。逆にいうと、放置すれば人間関係がぎくしゃくしたり、コミュニケーションミスが起きたりし、それにも適切な対処をしないと、ハラスメントや有意な社員の離職などといった組織や職場にとって重大な労務トラブルが起きてしまうなどといった負の連鎖が起きるリスクが高くなるといえるでしょう。

こうした考え方で事業や業務に活かしていくと、このハインリッヒ(ヒヤリハット)の法則は、重大クレームの防止、商品やサービスの改善などといったことにつなげていけるヒントをくれるものといえるでしょう。

ぜひハインリッヒ(ヒヤリハット)の法則を覚えて頂き、普段の業務に活かして頂くと良いと思います。

ホウレンソウがされる環境

ただ、こうして書くと、「なるほど」と言えるのですが、実際には、普段の「ちょっとした問題」を、管理職が適宜把握するということは、なかなか難しいということも事実です。
では、できるだけ適宜把握できるようにするにはどうすれば良いのか・・・。
できるだけ適宜把握するために必要なこと、その一つに、報告・連絡・相談(以下ホウレンソウ)がきちんとされる職場風土を作るということがあるでしょう。
お客様からクレームを受けた時、仕事で困った時、 ミスをしてしまった時・・・などはもちろんのこと、 日常の仕事や職場内での出来事なども、気軽に話しができる・・・ そんな職場風土を作っていく、こうしたことができれば、自然とホウレンソウが、管理職にあがってくることでしょう。

では、そうしたホウレンソウがきちんとされる職場風土を作るためにはどうすれば良いのか・・・ですが、それは、そうした職場風土を作るのは、自分であるということを、管理職自身がきちんと自覚することから始まると言えるでしょう。
自覚をするということはどういうことか・・・それは、管理職自らが、部下がホウレンソウをしやすい、さらに言えばホウレンソウをしたくなる、言動を普段からしていくこと・・・つまり、部下にホウレンソウを求めるだけでなく、普段からの自分の言動に気をつけ、自分の言動を望ましい形に変えていく、ということです。
そう、まさに職場風土を良くするのは、まず第一に管理職自身の言動にあるということなのです。

例えば・・・

あいさつ・・・あいさつは、「部下からするもの」とか「管理職からするのは威厳がなくなる」などと考えて、自分からあいさつをしない・・・ひどい場合は、部下からあいさつされても、あいさつを返さない、などという管理職がいたりします。

部下の話を聞かない・・・部下から話しかけられても「後にしろ」とか、そう言わなくても面倒くさそうにする・・・など、きちんと話を聞こうとしない、あるいは、話を最後まで聞かずに自分が話し始めるといった管理職もいます。
※部下の話のきき方については、コラム「部下の話をきく時に気をつけること」をご参照ください

その他にもいろいろな問題ある言動が想定されますが、このような上司に対して、はたして部下はホウレンソウをしたいと思うでしょうか・・・いや、部下の誰もがその上司に対し、ホウレンソウをしやすいというわけにはいかないことでしょう。
ホウレンソウをしなければいけないのはわかっているけれど・・・「怒られるかもしれない」「話しにくいな」「助けてくれないだろうな」などを思えば、人間、いくらわかっていても躊躇するものです。

だから、ホウレンソウをしやすい、 したいと思える職場風土を作るためには、管理職自身が、ホウレンソウをしやすい、そうした雰囲気を醸成する言動をする、このことが重要なのです。

人間力を磨く

では、どうすれば良いのか・・・それは、一言で言うと、人間力を磨くということだと言えます。
人間力を磨く・・・ざっくりとした表現ではありますが、人間力のある人とは、人間味とでもいうなんともいえない魅力や相手を大切にするなどと言ったものを持っている人だと言えます。
あいさつは自分から明るく元気にする、いつも笑顔、厳しい中にも愛情がある、どこか憎めない愛嬌がある・・・などといった「人としてどうなのか」という軸をしっかり持っている、こうした管理職の元では、おそらくホウレンソウを躊躇する部下はいないことでしょう。
そして、ホウレンソウがあった場合、叱ったり、注意したりするだけでなく、きちんとフォローをする。このことが大切です。叱ったり、注意はするのだけれど、フォローをしないでは、部下は逃げ場がなくなってしまいます。そのようなことが続けば、ホウレンソウを躊躇する部下が増えてくることは明白でしょう。だから、きちんとフォローする、このことを忘れないようにしましょう。

そして、こうしたことを管理職自身が自覚して普段からの言動を心がければ、おそらくどんな些細なことでも部下からホウレンソウがあがってくることでしょう。
そうなれば、ハインリッヒ(ヒヤリハット)の法則を活用して、クレームや問題、そして事故といったトラブルの発生を未然に防げる確率が高くなります。また、ヒヤリやハッとの段階であれば、対処する手間や工数も少なくて済みますし、重大なトラブルが減れば、一人あたりの生産性が高くなる、長時間労働が減るなどといった相乗効果も期待できます。

皆さんの職場でも、ホウレンソウとハインリッヒの法則を活用して、職場や組織の強化を図ってみてはいかがでしょうか。
ヒューマシー人事労務研究所では、管理職研修や、長時間労働改善、安全衛生体制作りなどの労務コンサルティングで、組織強化のお手伝いをしております。お気軽にご相談ください。
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