職場における人材の活かし方

働きもののアリでさえ…

2:6:2の法則をご存知だろうか。

2:6:2の法則とは、アリの世界において「良く働く優秀なアリが2割、普通に働く可もなく不可もないアリが6割、働いているようにに見えてサボっているアリが2割いる」というお話です。

そして、この 2:6:2の法則は、アリの世界だけでなく、生き物の集団では同じような配分で「優秀:普通:サボる」というものが生まれるということだそうです。

ということは、人間の世界でも同じことが起きるということになります。

どうでしょうか…

自分の会社や職場を思い起こせば、サボるというだけでなく、戦力にならないという視点で考えると当てはまることが多々あるではないでしょうか。

さらに、この理論の面白いのは、仮に戦力になっていない2割を「けしからん」ということで排除したとすると、しばらくするとまた2割の戦力外となる者が出てくるというところです。

私たちは、戦力にならない人材が職場にいると、邪魔者扱いをし、排除しようとしがちです。これは、ビジネスという厳しい環境の中においては、いろいろな角度から見てやむを得ないことなのだと思います。

しかし、たとえそうした戦力外の人材を排除したとしても、しばらくするとまた同じ戦力外の人材が出てくるのです。

レベルダウンを招く?

さて、ここでよく考えてみてほしいのですが、この戦力外の人材は、いったいどこからやってくるのでしょうか?

それは…決して外部からだけやってくるのではないのではないでしょうか。

実は、そのほとんどは、今の組織や職場の中から生まれてくるのです。

これは、考えれば恐ろしいことです。なぜならば、それは、これまで普通であった6割から生まれてくるということなのですから…

ということは、結果的に組織としてレベルダウンをしていることになるのではないでしょうか。
せっかく(?)戦力外の人材(=ローパフォーマー)を排除したのに…です。

このことは、人材という観点から会社や職場という組織構築を考えた時、強烈な示唆を私たちに与えてくれます。つまり、ただローパフォーマーを排除するのではなく、そういう人たちも組織には必要なのだという考え方も必要であるといえるということです。

戦国武将の人材活用術

戦国時代に、織田信長、豊臣秀吉に仕え、越前北ノ庄城主となった 堀秀政という武将がいました。

この堀秀政、人使いがうまい武将として多くの逸話を残している人なのですが、こういう逸話が残っています。

秀政の家来に、いつも涙目で表情が暗く、戦場でも後ろのほうで隠れている陰気な者がいました。別の家来からは、「あいつは、使えないし、暗くて、いると士気が下がるので、暇を出したらどうですか」と言われる始末です。

こう言われた秀政は、どうしたと思います?

秀政は、「あいつにぴったりな仕事があるぞ」と言って、その陰気な家来に、他家で葬式などがあった時のお悔やみの使者の役割を与えたそうです。そして、その使者の役割を与えられた家来、もともと陰気で悲しそうな風貌をしていますので、使者に行った同盟国からは、「こんなに心からのお悔やみを頂き・・・」と感謝され、同盟関係が強まったとかどうだとか・・・

いかがでしょうか。

真偽は定かではありませんが、この話、私は好きなんですよねぇ。

人の活かし方って、こうするんだっていうことがよくわかるじゃないですか。

このお話の家来、今でいう戦力にならないローパフォーマンスな人材(ローパフォマー)ですよね。欠点ばかりで…

でも、秀政のすごいところは、家来のダメなところの改善ばかり求めるのでなく、それを逆手に取って、活用できる仕事を見つけてしまう点です。

会社は、人を採用すれば、それに対する採用責任、雇用義務が生じます。使えないからといって、簡単に解雇することはできません。

で、あれば、いかにして活かして貢献してもらうかを考える必要があるのではないでしょうか。その時には 、得手不得手はあるもの という視点を持ち 、その人の得意な仕事、あるいは気づいていない特長を活かした仕事を できる限り見つけ与えていけるようにしたいものです。

そうすれば、戦力外と思えるローパフォーマーも役に立ち、職場のイライラやモヤモヤが減ると思うのですが、皆さんいかがでしょう?

それでも活かすほうが良い

この堀秀政のエピソードは、ほんの一例です。

実際の職場や組織で、このようにどんぴしゃりと人を活かしていくことは、そういつもいつもできることではないでしょう。だから、どうしてもの場合は、ローパフォーマーを切っていくしかないといえるかもしれませんが、それでも切るのではなく活かしていく。このほうが、組織にとって有益であるといえます。

上述したように「組織としてレベルダウンを招く」リスクが減ります。

また、新たな人を採用し教育するコストもかけなくてすむかもしれません。

それだけも有益であるといえるのですが、それでも組織にいてもらうからには、それなりに戦力になってもらう必要もあります。

繰り返しになりますが、堀秀政のようにうまく活かせれば良いのですが、そうもいかない場合、どうすれば良いか・・・

その方法が、実はあるのです。

それは、下2割のローパフォーマーに働きかけるのではなく、普通の6割に働きかけをし、そのレベルを上げていくのです。

私たちは、どうしてもできない人や問題がある人が目につき、そこに注力をしてしまいます。しかし、2:6:2の理論にあるように、ローパフォーマーは必ず生まれるのです。そういうサボることが役割(その集団においては…)の人に注力しすぎても、なかなか成果が出ることは難しいのです。

とはいえ、まったく野放しにするわけにはいきませんから、必要最低限の指導や注意をし、あとはやれることをしてもらいながら、悪影響を及ぼさないようにだけ気をつける。そして、メインの6割の人材にポジティブな働きかけをし、レベルを上げさせる。

そうすると、すぐに効果が出るわけではないですが、しばらくすると下の2割にもポジティブな変化が起きてくる・・・のです。

私は、これまでの人事経験や管理職経験の中で、いろいろと試してみて、その効果を実感しています。

そしてその方法は、その組織や職場の状況によって、一つではありませんので、その状況や環境、あるいは課題に合わせた仕掛けが必要になるといえます。

そうした対策について、職場の活性化や組織風土作りのコンサルティングの一環として提供させて頂きます。
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