知らなかったでは済まされない労務トラブルを生むリーダーの言動とは
働き方改革、ハラスメント、ワークライフバランス・・・などなど、最近は頓に雇用と労働における変化が激しくなっています。
それに伴い、これまでの労務管理に対する感覚では労務リスクが高まるケースが増えています。
働き方改革など法改正等により、対応を変えなければならないものもあります。
しかし
これまで正しいと思っていたけど間違っていた
ただ誰も気づいていなかった
違和感を感じている人はいたけど雰囲気的にそうなのかなと思っていた
などといったことも、これからは問題としてクローズアップされてくるということが増えてくることも忘れてはなりません。
情報化社会によって問題が顕在化する
現代は情報化社会。
老若男女スマートフォンなどを使い、インターネットで何でもすぐに調べることができます。
それは、労働や雇用といった場面でも同様です。
そうしたことを現す事象としては、最近の精神障害による労災申請の急激な増加があげられるでしょう。
精神障害による労災申請の数は、2005年くらいから増加し、2017年においては、精神障害の労災申請は件数にして1,732件/年と過去最高を記録しました。これは2000年に比べると 8倍以上の申請数となります。
それに対し、労災認定の数は、労災申請の伸びほど急激な伸びはしておらず、2017年に初めて500人/年を超えましたが、2010年以降200人程度の伸びに留まっています。
その理由は何なのか・・・
確かに2005年前後というのは、仕事でメンタルヘルス不調になる人が増えたと社会的に問題になっていた時期ではあります。
しかし、それだけが労災申請が急激に増えた理由とは言えないと、私は考えています。
では、精神疾患による労災申請が増えた理由は何なのか・・・というと、そこには情報化社会が影響していると言えます。
具体的にいうと、これまで労災申請は会社が手続きをするものと認識していた労働者が、インターネットなどで「労災申請は 労働者自身でできるのだ」ということを知ったからだと考えられます。
それを示すように、実際、特に精神疾患による労災申請では、会社からの申請手続きではなく、労働者本人からの申請手続きが増えているのです。
このことを認識した時に、経営者や企業の人事・労務の担当者が考えなければならないことは、自身で労災申請手続きをする労働者は、どうしてそうした行動をするのか・・・ということです。
一概に言うことはできませんが、会社に相談したけど聞いてくれない、いや、そもそも相談をしても無駄・・・などと労働者が感じているということが理由だったりしないでしょうか。
リーダーのその言動が・・・
では、どうしてそう感じる労働者が生まれるのか・・・
おそらく、それは、一つの出来事で突発的に起きるというよりは、日々の積み重ねによって労働者がそう感じてしまう・・・そうしたものである確率が高いのではないでしょうか。
そして、その原因のほとんどは経営者や上司の言動であったりします。
会社や上司に不信感や不満を感じる要因は、いろいろと考えられます。
パワハラやセクハラなどのハラスメント行為は言語道断ですが、それ以外にも、あいさつをしない、話を聞いてくれないなどといったコミュニケーションの問題、その他のいわゆる人間関係の問題など挙げればたくさん考えられます。
そして、意外と多くて大きな問題となってくるのは、経営者や上司による労務管理に関する言動です。
「有給休暇はない(取るな)」
「ミスしたのに残業代申請するつもりか」
「残業はタイムカード押してからしろ」
「忙しいんだから休憩なんか取ってる暇ないぞ」
始業時間が9時なのに「8時30分には出社しろ」
・・・などなど
こうして書き出すと「おかしい」と感じるけれども、日常的にはこうしたことを言っている経営者や管理職は意外と多いんじゃないでしょうか。
でも、ここに挙げた言動は、すべて労働基準法違反につながる可能性が高い言動ということになります。
例えば、有給休暇は、会社が与える与えないというものではなく、法律で付与される要件が決まっており、その付与された有給休暇は、労働者が使用することを申し出たら、原則会社が休んで良いとか悪いとか許可できるものではありません。
■参考■
知っているようで知らない有給休暇のこと
2つ目、3つ目の言動は、賃金未払いにつながる可能性のある言動です。
休憩は、6時間を超える労働では、途中に必ず与えなければならないですし、仮に休憩時間に労働させていれば賃金が発生し、その賃金を支払っていなければ賃金未払いとなることがあります。
また、始業時間前に出社するよう指示があれば、その時間は労働時間として賃金が発生する可能性があります。
こうした普段の何気ない言動で、法令違反と目くじらを立てることではないと考える方もいらっしゃるかもしれないですが、管理職、ましてや経営者が発する言動は、その立場から考えれば、会社として発している言動であると多くの場合で捉えられるのです。
そして、労働基準法は罰則付きの強行法規です。
その言動が法令違反に該当するのであれば、「知らなかった」とか「そんなつもりで言ったのではない」と言っても処罰の対象となるのです。
これは、交通違反をして「気づかなかった」と言っても見逃してくれないのと一緒です。
上述したように最近はあらゆる情報を得ることができる時代であり、様々な方法で情報を発信することができる時代ですから、そうした問題が顕在化しやすい時代でもあります。
経営者や上司の言動に疑問があれば、すぐに調べることができます。
そして、やっぱりおかしいと感じたら、どこに相談したら良いのかもすぐにわかるのです。
また、意図的、意図的でないにかかわらず、SNSなどでの何気ないつぶやきで、経営者や上司の言動が社外に発信されしまうことが容易に起き得るのです。
今こそ労務管理について正しい認識を
だからこそ、経営者はもちろん管理職が労務管理について正しい知識を持つことの重要性が高まっていると言えるのです。
このことは、近年顕在化し問題となった組織や企業の例を見れば明白でしょう。
さらに今年は働き方改革関連法の施行が始まります。ますます労務管理の重要度が高まるのです。
一方で、バブル崩壊以降、多くの企業が、マニュアル化や効率化を追求し、コスト削減を重要視した結果、こうした必要な知識を得る機会を逃してきています。
そのため、会社は、経営者はもちろん管理職が労務管理について正しい知識を持つことの重要性を認識し、きちんとした対策をする必要があるでしょう。
従業員を守り、会社と従業員の信頼関係を構築し、そして、経営者と管理職自身を守る意味でも、今こそ改めて労働基準法をはじめとした法令知識、信頼関係を構築し成果を出していくマネジメント能力の向上を図ることを企業として考えていく時なのだと言えるのです。
今一度、自社の経営陣、管理職の労務管理に関する認識について再確認、そして管理職への教育などの対策を考えてみてはいかがでしょうか。
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