メンタルヘルス問題を起こさない職場風土を良くする方法

メンタルヘルスに影響を及ぼす職場風土

働く人のメンタルヘルス疾患が増加しています。最近では、大手企業での長時間労働による労災認定のニュースも報じられ、社会的にも大きな注目を集めています。
国もこうした働く人のメンタルヘルスに関する問題に危機感を募らせており、ストレスチェック制度の導入や健康経営の推進など様々な施策を打ち出しています。
確かにこうした国による取り組みは大切でどんどん進めていく必要があるのですが、それが、企業にとってやらされてる感となってしまわないように気をつけることも大切です。もし、企業にそうした取り組みに対するやらされてる感があった場合、せっかくの取り組みも形骸化してしまい、その効果がなかなか出てこないということにもなりかねません。
そうならないためにも、企業が、働く人のメンタルヘルスの問題は、「気をつけなければ、自分たちの会社でも起きうることなのだ」という当事者意識を持つことが重要だと言えるでしょう。例えば、ストレスチェックを実施するだけでなく、その結果を活用して、自社の状況を把握し適切な対策を進めていくなどの取り組みが必要なのです。
そして、そうしてきちんと自社の状況を辿っていくと、社員のメンタルヘルスに影響を与えていることは、職場やビジネスの場における日常の些細なことの積み重ね・・・言い換えれば職場風土によるものだったりすることが多かったりします。

そこで、今回は、この働く人のメンタルヘルスに影響を及ぼす職場風土について考えてみたいと思います。

職場風土を測るバロメーター

職場風土が良いかどうか・・・これを測るバロメーターにはどのようなものがあるのか?
職場風土の良し悪しを測るバロメーターには、いろいろなものがあると思いますが、そうしたものについて比較的簡単に、そしてある程度確実に測ることのできるものの一つに、その職場や組織で働いている人たちの表情というものがあります。具体的にいうと、笑顔で働いている人、仕事を楽しんでいる様子の人がどれくらいいるか。逆に、苦しそうな人、きつい表情の人がどれくらいいるか。こうしたことが、意外とその職場の状況を表していたりします。

雑談の力

よく、「仕事なんだから雑談したりするのはいかがなものか」「集中する仕事だから私語厳禁」などといってシーンとした静かな環境の職場があります。確かにそのような考え方もあると思いますが、ほんとうにそこまで静かにしなければならない職場というのは、どれくらいあるのでしょう・・・録音スタジオなどのように他の音が入ったらいけない職場であればやむを得ないと思いますが、ほとんどの職場では、そこまでのことはないのではないでしょうか。

もちろん雑談や私語には、限度というものがあります。しかし、雑談や私語が全く許されないような職場環境というのは、重苦しい雰囲気であったり、緊張感が漂っていたりして、職場風土としては、望ましいとは言えない環境だったりしないでしょうか。むしろ、そうした職場風土では、新人などが何かを聞きたくても聞けなかったり、緊張することによるミスを誘発してしまったり、知らず知らずのうちに働く人が精神的に負担を覚えているということが多かったりするのです。

考えてみれば、新しい発想や創意工夫というものは、何気ない会話やリラックスしている時にふっと降りてきたりするものです。そう考えると、適度な雑談などは、仕事や組織にとってむしろ必要なものだと言えるでしょう。雑談など何気ない会話がある職場には、笑顔の人が多いであろうことは、あえて説明する必要もないでしょう。しかし、現実的には、そうした職場は残念ながらそう多くなかったりしないでしょうか・・・
実際、私のこれまでの人事経験においても、定着率が悪かったりメンタルヘルス疾患になる社員が多かったりするのは、職場内での雑談や何気ない会話がほとんどない部署だったりします。そして、そのような部署の管理職やリーダーの多くは、雑談や私語を悪いものと考え、シーンとした雰囲気が望ましい形と信じきっていたりするのです。また、そうした管理職やリーダーの職場に共通するのは、小さなミスや手順通りできないことを責めるという雰囲気になっていたりすることです。つまり、全体的に余裕がないのです。
だから、このような職場で働いている人を観察するとどこか苦しそうだったり、余裕のなさからくる固い表情であることがほとんどです。そして、そのような部署においては、労務問題が起きやすくなるという悪循環が生じるということが多かったりするのです。

声かけはポイントを押さえて

では、このようなことにならないためにはどうすれば良いのか・・・
こうしたことになるのを避けるためには、管理職やリーダー自らが、適度な雑談を部下に投げかけてみることが有効だと言えるでしょう。そう、いわゆる「声かけ」です。
こう書くと、「なんだ、声をかければいいのか」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、実はこの「声かけ」・・・きちんとポイントを押さえなて行わないと効果がなかったり、最悪の場合はマイナスの効果を生んでしまうものなので、注意が必要なのです。ということで、次に「声かけ」をする時に押さえるべきポイントについて考えてみたいと思います。

さて、「声かけ」ですが、以前当ホームページのブログでも書かせて頂きましたが、毎日、部下一人一人に上司から声をかける・・・ここがポイントだと言えます。

「なるほど」とここで納得して頂ける方もいらっしゃると思いますが、ここからが「声かけ」の大事なポイントになりますので、もう少しおつき合いください。

さて、声かけを毎日するとなると、だんだんただ単に声をかければ良いというわけにはいかなくなります。仮に「毎日声をかければいい」とだけ考えていたとすると、いつも同じような言葉、例えば、「頑張ってるか」とか「調子はどうだ」というような声かけになってしまいがちです。そうなると、日が経つにつれて、部下は「いつも同じことばっかり言っている」とか「頑張ってるの見ればわかるでしょ」などというように感じたりして、結果的にあまり良い印象を与えないということになってしまったりするのです。こうなると本末転倒、良い職場風土や職場の活性化につながらないということも起きちゃったりするのです。

一人一人をしっかり見る

そうならないためには、部下一人一人のことをしっかり見る必要があります。一人一人をしっかり見るというとどうしても難しく感じてしまうかもしれませんが、そんなことはありません。しっかり見て声をかけようと意識していれば、これまで気づかなかったような部下の表情や言動に関心が向くようになります。また、ちょっとした変化にも気づけるようなるはずです。そして、そうしたことに気づいた時にそのことについて一声かける・・・それで良いのです。
しかし、最初は照れ臭かったり、「どうして自分が声をかけなきゃならないんだ」と思ったりしてなかなか難しく感じるかもしれません。そうした場合はどうすれば良いのか・・・そうした場合には、まず「あいさつ」から始めてみるという方法があります。そして、そのあいさつに少しずつ一言を加えていきましょう。そうしていけば、なんとか続けていける確率が高くなります。そう、続けて習慣化することが大事なのです。

それともう一つ大切なことがあります。それは、部下一人一人にできるだけ平等に声をかける・・・このことも大切です。
特定の人に声をかける、逆にあまり声をかけてもらえない部下がいるなどということになると、えこひいきをしていると捉えられてしまう場合があります。これを避けるには、最初のうちだけでも誰に声をかけたか、手帳に「正」の字を書いて確認すると良いかもしれません。

で、こうしたことを続けていくと、しばらくすると(早ければ数ヶ月後)変化がみえてくるはずです。具体的には、職場内の会話が増える、部下からのホウレンソウが増える・・・といった感じです。
そして、最も大きな変化は、おそらく管理職自身に起きることでしょう。それは、部下一人一人を一人の人として見れるようになるということです。こうなれば、部下の女性社員が最近化粧気がなくなり目が充血して生気がない、ということに気づいた時の声かけの仕方もおのずと心配や気遣いといった内容のものになるのではないかと思います。このような部下一人一人を人として見ることができるようになった変化は、きっと管理職であるあなた自身にとっても、驚きと同時に大きな喜びになることでしょう。また、こうした管理職自身の変化は、部下の管理職に対する信頼感を高めるので、管理職が組織をマネジメントしやすくなるのです。
そして、このような変化とそれを習慣化することによって、職場に笑顔を見せる人が少しずつ増えてくるはずです。 そうなれば、職場の活性化や良い職場風土に向けた下地ができたと言えます。 それを継続していけば、きっと笑顔の溢れる職場ができていくことでしょう。その結果、きっと貴方の会社や職場においては、メンタルヘルスの問題が減ってくるはずです。
そのためにも、管理職やリーダーの皆さんが適度な雑談をする・・・このことから始めてみてはいかがでしょうか。

ヒューマシー人事労務研究所では、こうしたことを実現するためのストレスチェックの実施、健康経営導入支援など、職場風土作りのお手伝いをしております。お気軽にご相談ください。
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